【日常】前を向く。
母親が亡くなったと知らされた瞬間。
帰る新幹線の道中。
おじさんが迎えに来てくれて車で自宅に着き、自分が使っていたベッドに眠る、起きることない母親を見るまで。
ひたすらに祈り続けたさ。
「これが夢であってくれ」って。
眠る顔を見て、しわくちゃな手を見て、そんな冷たい手に触れた。
悲しんだり、苦しんだり、泣いたりすることを否定はしない。
否定はしないけど。
泣いていて生き返るのか?
悲しんで何もしないで、何か変わるのか?
答えはひとつしか見えなかったよ。
前を向かなきゃ、前を向いて必死に生きてやらなきゃ、何もつなげないって。
母親を笑顔で見送ることを自分に課した。
肉親や友達や、自分と深い関わりを持つ人が亡くなる苦悩なんてものは、今までそれなりに経験してきた。
他人がそうなるのも見てきたけれど、何が分かる?
人それぞれの悲しみの尺度なんて分からないし、分かってあげたくても分からない。
正直、笑ってる奴が居たくらいだよ。
自分は薄情モノと呼ばれても構わないから、分からない他人の悲しみ以上に、分かる進むべき未来を見てやりたいんだ。
それこそ一緒に。
そして今は沢山の人が、人の死を悲しんでくれるでしょ。
だったら、そこはその沢山の人に任せればいい。
役割分担は必要だ。
自分が笑顔で母を見送り、父や兄が泣き崩れたように。
自分はそれでいい。